日本を好意的に見た外国人の書いた日本史:「ライシャワーの日本史」(E.O.ライシャワー)

「ライシャワーの日本史」
エドウィン.O.ライシャワー著・国弘正雄訳 文藝春秋 1986年刊
原題 JAPAN The Story of Nation by Edwin.O.Reischauer
著者ライシャワーは今では過去の人。この本は、アメリカ人向けに書かれたもので、最初は1945年秋第二次世界大戦の秋(そのときの題名「日本:その過去と現在」)。その後題名はそのままで1952年、1964年に改訂版、1970年に大幅改定(題名は「日本:一民族の物語」)。今回の翻訳は、1974年にも改訂版。この翻訳を出すに当たってもまた改訂。この改訂版が出た頃、米国艦船の日本国内への核持込の有無を巡って政界・マスコミを騒がせた本。
この訳本が出版された頃も歴史には興味を持っていたが、余り読みたいという気持ちは起こっていない。最近、日本の歴史、特に飛鳥・奈良時代と明治維新に関係する著作を読み始めたが、ここで、日本に理解のあるアメリカ人が日本歴史をどう見ているか気になり読み始めた。内容的には、前半三分の一を使い明治維新までをサラッと流し、後半は明治以降、終戦までの歴史を扱っている。
日本文化の位置付けとしては、北ヨーロッパの国々が地中海文明の娘であるように、中国文明の娘の一人としている。更に時期的なずれはあるが、日本の封建制度(12C~16C)は、西欧のそれ(9C~13C)と良く似ている。即ち、中央集権的な皇帝支配の概念と部族組織とか個人的忠誠に基づく絆とかいった土着の伝統とがないまぜになって生まれたものとしている。更に江戸時代の日本は、科学技術の面を除けば決して後進国家ではない。集団としての統制力や協調のための技量などは西欧のどの国よりも進んでいたとしている。
明治以降の問題として、明治憲法が曖昧でどうにでも解釈できたことが戦争への道を進んだ一因。この戦争の初期、米国の要求通り早期に日中戦争を終結させていれば、第一世界大戦時同様にヨーロッパから経済的な利益を得ることが出来たとしているが、日本は経済より面目を取って戦争に突入したとしている。
戦後の日本の改革を支えたのは、一致協力して力一杯働く適応力、国民全体の教育水準の高さ、高水準の行政能力、優れた組織化の才能、工業生産の専門的知識そして、選挙及び議会政治という民主的制度の経験のよるとしている。更に、基本的には、米国が日本の将来にかけた期待と日本人自身の望んだものが一致していたと、日本に理解ある解釈をしている。課題としてあげているもののひとつが、「万事スムーズに運営されていた日本社会の中で、ひとり大学教育ばかりは一番難題が目につく分野のひとつである」と。この課題は今も残っている。
今後は(80年代以降)、日本が指導的役割を果たし世界が抱える問題解決に参画し役立っていくには、これまで以上に意思疎通に熟達し心底から他国民との共同意識を持つことが日本人には求められているとして締めている。
日本のことを理解している「書を捨てずに街に出た歴史学者」(訳者)の日本の将来への警告を含んだ書籍で、今の日本を考える上で面白い本だった。
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