文豪の初期の作品集:「司馬遼太郎短篇全集」を読んで

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「司馬遼太郎短篇全集一 1950~57 及び 二 1958~59」
  司馬遼太郎著 文藝春秋 2005年刊

 司馬遼太郎初期の短編集。昭和35年に「梟の城」で直木賞を貰う前の10年間の作品集。聞いた事の無い雑誌への投稿も多く、未だ大阪新聞記者の時代のものもある。
 内容としては、蒙古や中国に関するもの、日本の江戸時代に関するものは時代小説というより、歴史小説に近い内容で、その時代に関する知識の深さ、資料集め・解釈の深さ・努力が感じられる。更に、創作かと思われる大阪の商人を扱ったものには大阪の商売人魂が感じられる。獅子文六作だったか、昔映画で見た大阪商人(あきんど)を思い出させる作品も多数。
 特に、「壷狩」と「豪傑と小壷」は、江戸時代初期九州の小藩の運の悪い豪傑が、ヒョンなことから手に入れた壷(本人は自分の薬としてのせんぶりを入れて使っていた)が、流行の茶道の権威に、その値打ち(?)が認められ(こじつけられて?)て茶器として有名になる話は自分にとって面白かった。というのは、この小藩(杵築藩;当時は杵付藩で、江戸時代広範に一寸したことで杵築と名前を変えたはず)は私の故郷。その上、杵築が江戸時代初期には細川藩の領地だったということも初めて知った。自分の故郷が出てくると何となく嬉しいものだ。
 この作者の扱う歴史的小説は、キチットした資料に基づくようでその努力は大変なものだろうと推測される。ここの短篇小説として扱われた内容は、調べたが長編にはなりにくいものばかりだったのだろうか。
 同じく武士の時代を扱った藤沢周平とは観点が異なっており面白い。司馬は人間の強さ、藤沢は人間の弱さを扱っているように思えるのだが。

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